むし歯治療はなぜ時間がかかるのか?
- 2024年2月20日
- むし歯治療
むし歯治療とは
皆さんは「むし歯治療」と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「むし歯を削って埋める」「削って被せものをする」「痛くて怖い」など漠然としたイメージがあるかもしれません。むし歯治療は単純なようで、実は細かな作業工程が多く、皆さんの「なぜ1度で終わらないのか」「なぜ治療に時間がかかるのか」といった疑問にお答えできるかと思い、ブログの記事にすることにしました。
その工程を丁寧に行うことによって、治療した箇所が、その後二次的なむし歯(むし歯治療で被せものや詰物をした歯が繰り返しむし歯にかかること)になったり、詰め物や被せものが脱離(だつり、取れてしまうこと)せずになるべく長く持たせることが大事であると考えています。今回は初回なので、「むし歯治療 基礎編」についてお話ししたいと思います。
むし歯(う蝕)について
まずは簡単に、むし歯(う蝕)について説明します。
むし歯とは私たちが食べたり飲んだりした糖分をエサにして、口の中にいる細菌が作り出した酸によって歯が溶けた状態を言います。むし歯の原因菌はほとんどが口の中にいる常在菌ですが、口の中で増やさないようにすることや、酸を作りにくい生活習慣にすることで、十分予防することができます。むし歯の初期は痛みなどの症状はありませんが、進行すると痛みが出るだけでなく、歯の内部の神経まで進行すると、強い痛みが出るようになります。
むし歯治療で歯を削る理由
穴があいた状態のむし歯は、歯の中の神経の近くまで細菌が進行します。そうなると細菌のいる病巣部を削って除去する必要があります。そして、むし歯の原因菌が歯の中の神経にまで進行した場合は、一般的には歯科麻酔を行い、歯の内部の神経を取り除く治療(抜髄)を行います。さらに進行すると、原因となっている歯の内部で感染した神経や腐敗物、細菌を取り除く根の治療を行います。除去された歯質の欠損部分には、金属や歯科用のプラスチック、セラミックなどの人工材料を詰めたり被せたりして、元の歯に近い状態に修復します。一度失った歯質は歯科材料で修復はできますが、決して元の状態には戻りません。要するにむし歯にならない、しない環境づくりが最も重要です。
むし歯で歯を削る際に、しっかりとむし歯部分を除去しなければ、二次的なむし歯のリスクが高まるため、残すことなく削ると同時に健康な歯は削らないよう最小限に抑えなければなりません。ここでどのようにむし歯部分と健康な歯を見分けているのか、という疑問が湧くと思います。通常、むし歯菌に感染している部分は目視だけでは判断することができません。そのため多くの歯科医院では虫歯の色と硬さを頼りに軟らかくなった部分を削っていきます。つまり歯科医師の臨床感覚(削っている感覚)や経験で治療をしています。感覚なので場合によっては、むし歯の取り残しや削りすぎたり、治療する人によって、かなりのズレが生じる可能性があります。その結果、深く削りすぎてしまい神経(歯髄神経)を除去する可能性も高まります。
では、そのようなズレや削りすぎるリスクを無くすためにはどうするでしょうか。ここで、登場するのが「う蝕検知液」です。
う蝕検知液
当院ではむし歯治療を行う際にう蝕検知液を使用しています。う蝕検知液はむし歯になっている部分(感染層)のみに色がつくため、感染を起こしている部分を目視でも判断でき、判断材料が増えることで歯科医師の感覚だけではない、より確実な治療ができるのです。つまり健康な歯は削らずにむし歯の部分だけを選んで削ることができ、むし歯を取り残すことがありません。よって二次的なむし歯の発生を極力防ぐことができると考えています。当院ではむし歯の大小に関わらず、う蝕検知液を使用し、赤く染まっている部分がないか(むし歯の削り残しがないか)を、患者様にも鏡で確認してもらいながら、治療をすすめています。
治療の際には、まずこの薬剤で染めて、色が付いた部分のみを削り、削って出てきた部分に取り残しがないか、また染めて…という単調な作業を1本のむし歯に数回繰り返します。表面上で見るよりも削ると思いのほか虫歯が大きかったり、深かったりすることもあります。ですので当院でむし歯治療される方は非常に時間がかかると思われるかもしれません。ただ、私は健康な部分をなるべく削らずに、むし歯部分のみを慎重に、そして丁寧に除去したいので、この作業に時間をかけています。
現時点では、このう蝕検知液に勝る検査方法はないと考えています。もちろん、検知液でも100%ではないので、臨床感覚と併せて治療をすることが大切と考えています。
このように、当院では丁寧なむし歯治療を行うことにより、可能な限り二次的なむし歯にならず、患者様が長く被せものや詰物を使用してもらえるように努力しています。 もちろんむし歯治療が終わったことが全てではなく、その後の患者様自身のセルフケアや歯科医院でのクリーニングが重要なのは言うまでもありません。
当院のむし歯治療のこだわり
最後に繰り返しになりますが、当院ではむし歯治療の大原則である健康な歯を削らないようにしてむし歯部分のみを除去することの正確性を高めるために「う蝕検知液」を標準治療として使用し、できるだけ健康な歯質や神経を温存する可能性を高められるようにしています。その上、被せ物や詰め物で治療した歯を二次的なむし歯から守り、少しでも長く使用していただけるように努めています。患者様が1本でも多く歯を残し、生涯ご自身の歯で噛んで生活することを大切にしていただきたいと考えるからこその、こだわりです。
今回は初期むし歯の治療 基礎編についてお話しましたが、次回に続きます。